Yoshie Tachiki - Blog

装幀画展Ⅶ ~文学とアートの出逢い~
立木美江

2019年12月12日

麻布十番パレットギャラリーにて初日のレセプションに出席しました。
一年ぶりの東京でしたが画廊主の大島さん、杉本さんを始め御企画頂いた山本さん、御子柴さん、高橋さん、ゲストに石崎さん、ノートンさん、原岡さん、芦田さん、そして写真を撮って頂いた仲村さんと皆様にご挨拶させていただいたこと、お越しいただいたこと、とても嬉しく思いました。

以下はご挨拶させていただいた折の作品紹介の内容までに
【♯「きりぎりす」を未読の方はネタバレですので、以下は読まないで下さい】

 

太宰治といえば昨今映画にもなり、羅生門や走れメロスは教科書に掲載されている言わずと知れた作家ですが、こんな短編をご存知でしょうか?

この本のタイトルは「きりぎりす」ですが、短編に「水仙」という話が納められています。
ある女性が趣味で絵を描いてみたら、天才だ!と周りにおだてられるうちに
、 画家を志し、自分を見失い、多くのものを無くして人生を転落してしまうという話です。

最後には作品すら遺らず消えてしまうのですが、
その女性が太宰先生を訪ねて来たことがありました。
「自分が描いた【水仙】の絵を観て欲しい」と訴えかけのですが、
どうせ観るに価しない作品だからと、追い返してしまいます。

その後女性の顛末を知った太宰先生はこうも思うのです。
もしかしたら、本当に天才で、作品も素晴らしいものであったのかも知れないと。

失われた作品はどこにも見つからず、名画か駄作かの真相は分からずじまいで終わります。

同じく絵を描く者としては、ホラー小説のように感じました。
画家が様々な書き手の物語に登場すると、 こんな画家も居るんだな~と俯瞰して思うこともあるのですが、
この作品で登場する画家は明日は我が身といったところで、
とても他人事には思えませんでした。

展示は12月15日まで、詳しくは麻布十番パレットギャラリー公式ホームページをご参照下さい。

麻布十番パレットギャラリー
〒106-0045 東京都港区麻布十番2ー9ー4
ご予約・お問い合わせ
TEL&FAX:03‐6435‐2336
http://palette-gallery.jp/


日常

Copyright © 2004 Yoshie Tachiki All Rights Reserved.